尾月
※ハピエンバドエン、追加設定、性癖、なんでもあり。ご自由に。
※二人が学生です。
※月島が可哀想
優しく殺して
アイスクリームが溶けたメロンソーダと同じ色。氾濫して普段の倍に広がった川、濁ったグリーンの中を、真っ白な鯉が泳いでいる。甘ったるそうな水面を上流へ切り開く背びれから跳ね返った光が、見下ろす俺の目をチカリと刺した。
梅雨の明け方は涼しく、眺める景色は輝いていた。橋を吊るワイヤーも鉄筋の柱も家々の屋根も緑の桜も茂る川辺も空も風も、何もかも大雨で洗われてピカピカなのに、橋上に並んで立つ月島と俺の学ランだけ埃っぽい。昨晩は家に帰らず、校庭の体育倉庫で雨の音を聞きながら月島と過ごした。
「今日死にたい」
欄干に顎を預けた月島が呟く。一年ぶり、三度目。白い魚を追う目の周りが、赤黒くうっ血している。顔だけじゃなく腹も背中も痣まみれだった。保健室から盗んだ叩くと冷たくなる冷却材を一晩中当ててやったから、腫れは昨日より引いている。
「じゃあ、まずは朝飯ですね」
前の二度は死に場所を決める前に空腹でウロつくのにうんざりして、腹を満たす頃にはどうでも良くなってしまった。月島は魚から俺に視線を戻し、「なに食うか」と笑った。
こんな時間に開いてる店は駅前のカフェか、ファストフードくらい。いつも食ってるものと変わらないのに、いま食べることだけ考えれば良い、先のことは知らないと切り替えるだけで、仏頂面も二カッと可愛い笑顔になる。
「最後だからなあ、牛丼特盛ですか?」
「洒落た飯がいい」
「じゃあカフェで」
どんな彩りの良い飯でも、埃っぽい坊主頭の前に並べたら洒落ていないのだが、まあ、どうでもいいか。俺が駅に向かって歩きだすと、月島も底がすべすべになったスニーカーをペタペタ鳴らした。
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